第40話   海タナゴのナブラ   平成15年9月27日  

海タナゴのナブラを見たのはもう30年もなるだろうか?

コアジ、イワシ等の回遊魚のナブラは幾度も見ている。何千何万という魚が狂ったように大きな集団となり回転しながら右に左に一塊となって動いて行く。船酔いする私は陸っぱりの釣しか出来ない。沖合いではアジ、イワシなどの回遊魚のナブラはそう珍しくはないだろう。

昭和47年頃だろうか。秋田県由利郡金浦町の金浦漁港の南防波堤がまだ離岸提で地続きになっていない頃である。其の日は曇りで、朝早くタナゴを釣るために6人でゴムボートを出して渡った。酒田を3時半に出発して途中イサダを捕まえての釣行である。防波堤に渡る前に漁港の近くの自販機でコーヒーを買った。当時はまだ100円である。釣の初心者が「私が奢ります。」と云って100円硬貨を投入した。偶々おまけつきの自販機であったので、1本おまけがついた。それでボタンを押すと又当りが出た。不思議な事に次々と当りが出て計6本を100円で買う事が出来た。試しに別の友達が100円入れてももう出なかった。

今日は運が良いから「何か良い事があるぞ!」と皆で話し合った。渡ってしばらく行くと澄んだ水面の下に赤茶色の魚が、すごい勢いで回転しているのが見えた。なんだろうと良く見ると海タナゴの大群が狂った様に何千匹の群れを成してうごめいている。しばらくはあっけにとられ見取れていたか、釣れないことは無いだろうとイサダを付けて其の中に放り込む。直ぐに当りが出る。上げると2428cmの立派なタナゴだ。そんな事が30分ばかり入れ食い状態が続いたが、その後ぱったりと居なくなった。

その日は其の時だけでタナゴは釣れなかった。海タナゴがナブラ状態になるのは聞いた事がない。普通海タナゴは海草のある岩陰などに潜んでいる筈だ。なのに・・・・。その後23年後に北側の防波堤で同じような事を経験している。とにかく釣を長くやっていると思いがけない事に遭遇する。